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建造船乗船記 : D/W 71,000MT Panamax Crude Oil Tanker尾道造船(株)設計部 小畑訓男
本船は D/W 71,000MT,L × B × D : 218m × 32.2 m × 19.6m,COT 容積 : 82,000m3 の Panamax Crude Oil Tanker の第一番船で 2004 年 1 月に引き渡しました。本船就航後の性能検証を行い更なる向上を図る為,実際の営業航海へ 1 月 30 日より 4 月 11 日の 73 日間,乗船致しましたので紹介致します。 その前に,乗船中の食事について一つエピソードを紹介します。私は乗船中,Captain の計らいで食事は Officer mess で戴いていました。尾道を出航して 2〜3 日後のことでした。何かおかしい,昼と夜は必ずチキンカレーだったのです。何故,長い間,気がつかなかったのだろうか,そうだ毎日味が違うからだ。「インド料理はすごい,同じ食材でこんなにも違う味が出せるとは」と感心した矢先,Captain がフィリピン人 Chief cook に「毎回,味のバランスが取れていない。きちんと味見しているのか」と不満を一言。そこで初めて気が付いたのですが,フィリピン人 Crew は何でも食べるのに対し,インド人 Officer は宗教上の理由で鶏肉しか食べない人が大半。従って,Officer の食事は毎日が "チキンカレー" に固定されていたのでした。その半面,Crew の食事は牛肉,豚肉,魚とバラエティーに富んでいて羨ましい限りでした。 このような食生活の面からも,2 カ国以上の人が乗っている混乗船の難しさを垣間見ることが出来たわけですが,国籍が異なっても乗組員一同が最優先に考えていることは同じです。それは,安全に航海を終え無事に元気で家族の元へ帰ることです。そこで我々造船所は何が出来るのかと考えてみると,やはり "信頼できる安全な船を造る" ことに尽きると思います。何が安全の為に必要なのかと悩んでしまいますが,我々一人一人が建造中に任されている仕事を自信と責任を持って遂行すれば,自然と安全な船は出来上がると思います。 今回,大西洋航行中に約 8〜9m のうねりに遭遇しました。船首部は完全に波に打たれ,Upper Dk 上を海水が走り,時折水しぶきが操舵室までかかってきていました。載荷状態にもかかわらず,木の葉のように揺れ,船体は目ではっきり分かるほど上下に波打っていました。このような状況では設計の計算,ブロックの精度,組立てのブロックの合わせ,溶接の品質などいずれが不備でも大西洋航行中の本船船体亀裂から重大事故を引き起こす可能性があります。各建造工程において確実な仕事が行われて初めて安全な船が出来上がると確信致しました。万一,時化の中でメインエンジンが止まれば船は遭難の危機にさらされることになります。メインエンジンの安全運転についても,細い電気配線から各ドレンラインに至るまで確実な仕事が行われてはじめて達成されると思います。乗組員は口をそろえて言ってくれました。「Japan is proud of Asia。日本の製品は故障しない,我々は日本製の自動車や家電品を買うことを誇りに思っている。日本製に乗船したことがあるが古くてもしっかりして問題なく走ってくれていた。」など日本製品に対する敬愛の深さには驚きを覚えました。 本船は日本出航後,シンガポール・スエズ運河・大西洋・カリブ海と荷役を繰り返しながら航海を続けその間,各種性能・効力確認を行いました。結果,当初の設計条件を遺憾なく発揮,クリアーしていることが確認され,船主殿に賛辞を戴くことが出来ました。本シリーズは合計 8 隻のヒット商品となり,現在連続建造体制に入っております。また,本船の経験を生かした D/W 75,000MT 型 Panamax Product Tanker も設計を終え,71 型同様既に多数の発注を戴き,次期主力商品としての期待が高まっています。 最後に本船及び尾道造船の建造船の安全航海と活躍を願っています。 関連リンク |
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