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建造船紹介 : 世界初の浮体式 LPG 生産・貯蔵・積み出し設備

(株)アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド呉工場 上田孝彦

LPG FPSO イメージ図
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LPG FPSO 一般配置図
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現在,アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド呉工場では,第二造船ドックにおいて,モナコのシングル・ブイ・ムアリング社から受注した 13 万 5000 m3の貯蔵能力をもつ "LPG の浮体式生産・貯蔵・積み出し設備 (LPG FPSO : Floating Production, Storage and Offloading Unit)" を建造中です。2003 年 11 月進水,2004 年 7 月末に完成予定で,引き渡し後は,国際石油資本の米国シェブロンテキサコ社を中心としたコンソーシアムに用船され,西アフリカアンゴラ沖の油田およびガス田の随伴ガス生産に従事します。

本 "LPG FPSO" では,船形の浮体の中に,IHI が独自に開発した SPB (自立角型) LPG 貯蔵タンクを設置しています。マイナス 50℃ の極低温に冷却,液化される LPG を貯蔵する SPB タンクには,

  1. タンク壁面を破壊する恐れがあるスロッシング (液体の揺れ) を防止する内部隔壁をもった構造であるので,LNG/LPG の液量にかかわらず貯蔵,積み出しが可能。
  2. タンクが船形をした浮体の内部に納まるので,甲板上に大きな突起物がなく,大規模プラントの搭載が可能。また風圧抵抗が少ないので安定性が高い。
  3. 丈夫な板骨構造で構成されており,疲労寿命も含めて強固なタンク構造が可能。
  4. 浮体構造とタンクの間に常温の空間が確保されているので点検・保守が容易。

等の優れた特徴があり,浮体設備による LNG や LPG の洋上生産および受け入れ基地の安全を確保することができます。

浮体の上部には,LPG の分離装置,冷却装置および蒸発ガスの再液化装置を装備し,世界初の浮体式 LPG 生産・貯蔵・積み出し設備を実現しています。

LNG や LPG の洋上での生産および貯蔵設備は,海底パイプラインが不要になるばかりでなく,土地が不要,土木工事費用の削減,建造期間の短縮,現地の環境に与える影響が軽微など多くのメリットがあり,21 世紀の技術として大きく期待されています。

これまで,原油生産に伴う随伴ガスは,商業生産の難しさから洋上で燃焼し廃棄されることが多く CO2,NOx,SOx などの有害物質発生の原因となっていましたが,この "LPG FPSO" が実現すると,低コストでの LPG の商業生産が可能になるばかりでなく,地球温暖化防止と現地の環境保全に大きく貢献できることになります。

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