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創成型授業 "Paper-Bicycle Project" の概要広島大学大学院工学研究科 濱田邦裕
広島大学では,紙を材料として人が乗って走れる乗り物を製作し,その性能を競うプロジェクト,名付けて Paper-Bicycle Project を授業で行っています。ここでは,その内容を紹介します。 工学部では,自然科学,情報技術,各分野の専門技術に関する多くの知識を学びます。しかし技術者にはこれらの知識に加えて,自らの力で問題を発見する能力,様々な知識を応用して問題の解決策を探求する能力,さらに新しいものや機能を創出する能力が求められます。また,自分の考えを論理的に相手に伝え討議する能力や,チームとして計画的・効率的に仕事を進める能力も必要です。しかしながら,通常の講義でこれらの能力を養うことは,容易ではありません。そこで私達は,学生が自ら乗り物を企画し,その設計と製作を通じて,上に述べたような能力を身につけられる授業方法を検討しました。それが "Paper-Bicycle Project" です。 ところで,なぜ "Paper" で,なぜ "Bicycle" か,というと,まず "Paper" は,鉄などに比べてもともと弱い材料なので,少し設計がまずいとすぐ結果に跳ね返る,つまり壊れてしまうからです。また,"Bicycle" にしたのは,その動くおもしろさと競争性からです。 では,授業の中身を少し詳しく説明します。Paper-Bicycle は,厚紙と紙パイプを主要材料とした,人が 1 人乗って人力で前進・旋回できる乗り物です。乗り物の形や駆動方法は自由ですが,乗り手の体は直接地面に触れてはいけません。このような乗り物を,4 人程度のグループに分かれて設計・製作します。そして,出来上がった乗り物の重さと性能の両方を考慮して順位を競います。ただし,単に競技の順位が高ければよいというのではありません。この授業では,競技より,設計と製作の過程でどれだけ綿密に問題点を検討したかを重視します。例えば,それまで学んだ力学をいかに駆使して強さを証明したか,製作上の問題点をいかに考慮して設計したか,等々です。これらの検討内容は,発表会で報告させます。 授業は,コンセプトの立案,構造設計,製作,レース,そして総括へと進んでいきます。そして,授業の節目に発表会を実施することによって,問題発見・解決能力に加えて,コミュニケーション能力を養います。写真は授業の様子であり,上から製作の様子,発表の様子,レース風景です。 この授業では,良い自転車を完成させるために何を検討すべきか,また,どのようにして問題を解決すべきかは,学生自身で考えなければなりません。教員は,学生の検討内容にコメントするのみです。このために,最初の発表会では,検討が不十分なグループや,自分達の考えを相手に伝えられないグループもあります。しかし,授業が進み,学生が授業の目的や意義を理解しはじめると,その様子は一変します。例えば,教員にも想像できなかったような構造を設計し,実際に成立させたグループもあります。また,設計した構造の妥当性を確認するために,講義のレベルを遥かに超えた解析を実施するグループもあります。そして,プレゼンテーションに関しても,内容・技術・討論の全てが飛躍的に向上していきます。これは,教員の指導も多少はありますが,それよりも,他のグループの様子を観察し,学生間で切磋琢磨した効果が大きいようです。 本授業を通じて,学生の持つ能力を再認識させられました。学生が真剣に物事に取り組み,その能力を最大限に発揮した場合,教員の想像以上の成果を挙げます。今後も,内容,方法に改善を加えつつ,より高い教育効果を得られる授業としていく予定です。 また,この授業の詳細は,以下の URL で公開しておりますので,興味のある方はご覧下さい。 関連リンク |
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