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サービスエンジニア乗船記

(株)名村造船所造船設計部 井手康正

Suez Canal にて
Suez Canal にて
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航走中の Atlantic Bridge
航走中の Atlantic Bridge
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今年 1 月末に(株)名村造船所伊万里事業所にて完工した新造船 "Atlantic Bridge" (177,000t 型バルクキャリアー) にサービスエンジニアとして乗船しました。この制度は,新造船が出航する際に造船所の社員 1 名が 1〜2 月間の実航海を体験するもので,就航後のアフターサービスだけでなく社員の教育も目的としたものです。乗船者は設計・現場を問わず,20〜30 代の若手社員が中心となっています。

私が乗った船は鉄鉱石の輸送が任務で,主に原産地〜ヨーロッパ地方の間を往復します。本船の乗組員は船長以下全員がフィリピン人で,私を含め合計 21 名でした。日本を出航したあとは,まず韓国に立ち寄り燃料・食料等を補給し,その後オーストラリアで鉄鉱石を積み込みます。そしてスエズ運河を経由して目的地のイギリスに向かいます。

真冬の寒い中での出航でしたが,その 3 日後には気温 30℃ を超え,航海の大部分を暑い気候の中で過ごしました。一度港を出ると周囲に見えるものは海ばかりで,船上では毎日全く変わらない規則正しい生活が続きます。この時期の南半球は終始天気も良好で,全く荒れることがありませんでした。あとで考えると,長い航海の中で一度も船酔いをしなかったことが一番だったと思います。

船上での私の仕事は,不具合およびクレームを調査し,会社へ報告することでした。船からの要望はさまざまで,細かいトラブルもたびたび起こりましたが,陽気な船員たちのおかげで楽しい船内生活を送ることができました。乗組員が全員フィリピン人ということもあるのでしょうか,船内は和気あいあいとした雰囲気で,階級の上下に関わらずお互い助け合いながら仕事をしているのが印象的でした。私自身の英語に関しては話すことには不慣れでしたが,不思議なもので,長く一緒に乗っていますと,話す内容だけでは決して十分ではないのに相手は理解してくれるようになりますし,相手の行動を見ているだけで何が問題でなぜ困っているのかも自然とわかるようになりました。

いろいろな国の近海を通過しながら無事に航海を終え,4 月の初旬,イギリスでの最後の荷役港イミンガムにて船を後にしました。

この約 2ヶ月間,日常の設計業務では見る機会の少ない機器の操作やメンテナンス等の作業を実際に仕事をしている船の上で観察できたこと,また船員達と生活を共にしながら一緒になってトラブルを解決できたことは,私にとって貴重な体験で大変勉強になりました。今後の大きな励みになったと思います。

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