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名物オバサン奮闘記

佐世保重工業(株)歯科予防室 高梨真由美

平成 17 年の歯科予防教育の様子
平成 17 年の歯科予防教育の様子
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「よ〜し,O.K.!」たった数秒で終わってしまいます。保健所で私の子供が歯科検診を受ける時の光景です。1 歳と 4 歳なのですが,虫歯が一本も無いので検診が直ぐに終わってしまうのです。「あの人のお陰だな〜」と思う瞬間です。あの人とは,広い造船所内の各職場を自転車で精力的に巡回し,社員と家族の歯科予防を推進している当社の高梨さんという女性の歯科衛生士の方です。上は 60 歳から下は 18 歳まで,色々な人たちにおせっかいを焼く明るさと根性は,歯科医療費の軽減という具体的な成果を当社にもたらしています *1

最近は歯科衛生士という枠を超え,カウンセラーとして社員のメンタルケアにも力を注いでいます。当社の職場になくてはならない名物オバサンからのお話をご紹介します。

(佐世保重工業(株)造船設計部 滝口信次 記)

*1 従業員を対象とした歯科予防プログラム参加者の年間歯科医療費は、参加していない人と比較して、プログラム終了後 2 年目、3 年目では約 4500〜5000 円程度の節約が認められました (2001 年発表の資料)。




佐世保重工業(株)においては平成元年から歯科保健事業を開始し,職域単位での指導を中心に子供歯科教室など家族を含めた歯科予防事業を展開しています。極力歯を削らず個人に合ったブラッシングとフッ素の応用,甘味コントロールを含めた生活改善の支援を中心に歯を守っていこうという独自の事業です。麻酔の痛い注射を我慢し,オエッとしながら歯の型取りをし,何度も通ってやっと口の中に入ったピカピカの金属の歯を見て安心し,歯科医院を後にするも束の間… "人工物" は平均約 6 年の寿命という報告もあり,また歯科医院のドアをたたくことになります。駆け込み通院は歯を失うスピードを早め,医療費アップ,作業能率ダウンへとつながっていきます。予防事業を行なうことで,医療費の軽減,生産性の向上と労働時間損失の防止に貢献できればと考えています。

若いうちに予防教育ができないかを考えていたところ,平成 15 年から新入社員教育に歯科予防教育を組み込むことが了承されました。まず新入社員のオリエンテーションで,むし歯と歯周病の基礎知識を含め予防についての動機づけを行います。その後,約 2 ヶ月の研修期間の昼休みを利用し,お口の中のチェック,班単位のグループワークへと続きます。この間に,顕微鏡でお口の中の細菌を観察し基本のブラッシング方法を学ぶほか,人とのかかわり方,各自出身地の紹介,恋愛論にいたるまで話は次々と展開します。コミュニケーションが円滑になったところで,歯科予防室でひとりずつ指導を行います。そして,専門家によるお口のクリーニング (清掃) を実施します。個人への指導はこの時だけですから,その人の生活背景を探り,アドバイスをするのが課題です。とはいえ,思いもよらない悩み相談に時間をとられることもしばしばです。研修終了時の説明会を実施する頃には歯科予防のテクニックを身につけ,一年後の定期健診へつなげます。

老いることが実感できない彼らに,歯と親と髪の毛は無くしてからありがたさがわかることをどう伝えていいのか試行錯誤の毎日です。「磨いていると磨けているは違うとよ。歯磨きは要領良く,効率良く。仕事も同じ,一生懸命は当たり前〜!」と,うるさいオバサンの奮闘の日々は,正規配属後も続きます。

長い会社人生の入り口に立った新入社員に歯科予防を指導することは,単に彼らの歯を失う本数が減るだけでなく,「自分の身体は自分で守る」という自己管理能力を向上させ,歯周病を含む生活習慣病やメンタル面の改善にもつながっていくと考えています。歯科予防という身近な問題を通して,健康を考えるきっかけを生み,末永い人生の健康づくりへの寄与につながることを願っています。我社の明日を担う彼らが怪我なく活気をもって働くことを支援できるよう,今後もうるさいオバサンであり続けようと思っています。

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